利用者ご家族様や地域・関係機関の皆様、そして職員など約120名が聴講する中、当法人庶務課長多田好江(認知症サポーター養成キャラバンメイト)が「認知症と向き合う」~それぞれの立場・それぞれの役割~と題して講演を行い、続いて4名の職員が特養や在宅サービスでの介護・看取りなど日頃の取り組みを発表しました。
発表後、参加された地域の方から、「ぜひうちの地区でも本日の認知症の話をして欲しい」と、早速依頼依頼がありました。
今回は、講演者や実践発表者全て法人内の者で行い、‘‘力を合わせ’’、‘‘法人の総力を挙げて’’この介護実践発表会を行いました。この経験をこれからも活かしていきたいです。
お忙しい中お出掛け頂き、本当にありがとうございました。
【日程】
10:00 開会
10:05 講演 「認知症と向き合う」
~それぞれの立場・それぞれの役割~
社会福祉法人やまゆり 庶務課長 多田 好江
(認知症サポーター養成 キャラバンメイト)
10:40 休憩
10:50 実践発表
○「その人らしく」生きるために
~Aさんの世界観の共有と関わり~
通所かがやきの家 管理者 松熊 芳子
【はじめに】
通所かがやきの家では、介護保険法で定められた事業所で、在宅生活をされている要介護者・要支援者の方々に通って頂き、レクリエーション・入浴・食事・日常動作の訓練等のサービスを提供している。サービスの提供により、自立生活の支援、孤立感の解消、心身機能の維持、ご家族の身体的・精神的負担の軽減を目的としている。現在利用定員10名に対し、日々3名の職員で業務にあたっている。
当事業所で認知症と診断された利用者、「軽度認知症」と考えられる利用者の割合は、全体の5割を占めている。今回は、当事業所で行った認知症の方に対するケアで良い成果が表れたので、ここに報告する。
【成果とまとめ】
今回、デイサービスで以上の取り組みを行った結果、一番に変化が表れたのはAさんの表情だった。利用当初は不安からか表情が硬く、他の利用者からの声かけにも一言二言のみの返答であったが、取り組みが進むに連れ、じっくりとテーブルに着き、表情豊かに昔の事、地域の事、仕事の話など生き生きと話される姿が目立つようになった。更に、何かが気になり、外へ出かけようとされる事が少なくなった事や、デイサービスでなかなか入れなかった入浴も、行えるようになった。
その成果は、認知症に対する理解を深めた上で、Aさんに対し個別にプログラムを組み、対応を行った結果だと考えている。
Aさんが、皆さんの輪の中に入り、ご自分の中にある世界観を共有出来る事、ここは自分の居場所である、仲間が居て落ち着ける場所だと感じてもらえたら幸いだと思う。
○「さぁ~、みんなで出かけら~や」
~歩いても転ばない体づくり~
グループホームせせらぎの家 管理者 吉川 知里
【はじめに】
支援の中で、「転倒」という一瞬の出来事がその人の生活を変え、願いや笑顔を奪ってしまう事を私たちは経験した。この経験が利用者にとって「怖い思いをしたくない」、職員は「転んでほしくない」と消極的な考えに変わっていく原因になった。思いや願いを叶える支援から、安全に日常を送れる支援に変わってしまった。そこで、もう一度、誰もが「笑顔」で過ごせる様に、今一番影響を与えている「転倒」に焦点を置き支援を見直したことを報告する。
【成果とまとめ】
消極的な支援から、「笑顔」で生活する為に必要な事をすべきであるという積極的な意識に変わり、継続して行う事で成果が見えてきた。それが自身につながった。課題としては、プログラムの評価の仕方、一人ひとりに合わせたプログラムの検討がある。そして、これからもたくさんの問題が起こると思うが、今回の取り組みが共に考え、立ち向かう為の原動力になっていく事を信じている。
○「利用者の意思に基づいた看取りケアに向けて」
~ビハーラ活動と本人の意向を聞く活動の報告~
特別養護老人ホームやまゆり苑
介護支援専門員 石﨑 仁久
【はじめに】
看取りとは近い将来に死に至る事が予測される方に対して、死に至るまでの期間お世話する事である。
わが国では超高齢化社会を迎え、多くの高齢者の看取りをどこでどのようにしていくかということが課題となってきている。自宅での介護や医療保険の限界もある一方で、「延命治療を望まずに静かに最期を迎えたい」と言う考え方も広がってきている。この様な中で、特養で最期を迎えられる方が増えつつある。特養での看取り介護は、入所者本人・家族の思いを受け止めて日々の生活を支えることが求められている。
やまゆり苑では年間約10名の方を苑で看取っているが、看取り期の生き方や望みをご本人と話し合うことは出来ていなかった。そこで利用者の思いを知り、支える事を目的に、平成24年度から宗教家の方によるビハーラ活動と、介護支援専門員による聞き取りを行ってきた。2年間の活動を通して今後の方向性を考えたので報告する。
【成果とまとめ】
ビハーラ活動と併せて介護支援専門員が利用者に出向き、聞き取りを行いながら徐々に考えをまとめていく作業を経て、5名の思いを聞く事に繋がった。ビハーラ活動の中では利用者が「住職と○○屋のおばさん」といった地域社会での関係性を持ち、住職は利用者の思いや悩みを聞いて支持してくれる存在であった。また仏の話やあの世の話を交えながらの談話は「死」を話題にし易い環境作りに繋がった。ビハーラのお茶会では利用者自身の看取りの意向を語り合うものにはならなかったが、これに連動した居室での聞き取りは有効であった。今後も活動を広げ、利用者が考えるプロセスを支援したい。
○「本人の意思確認ができない方の看取りケアを考え
る」~本人の思いを推察したケアの実際~
特別養護老人ホームやまゆり苑
介護職員 今岡 友香子
【はじめに】
本人からの意向を確認できない方の看取り期に、生活歴やご家族との話し合いの中で、本人の意向を推察してケアをした。本人の意向が確認できない方の、最期をどう支えるかを考えたので報告する。
【成果とまとめ】
今回の事例は、長期間の入所であり、A氏をよく知ることができた。また、ご家族との関係作りもできていた。しかし、やまゆり苑では入所期間が短かったり、認知症等により情報収集や関係作りが困難なケースが増えている。私たち介護者は高齢者の意思が確認できなくても、意思に沿った支援が出来るように、その方を良く知る努力をすることと、そこから本人の思いを汲み取ることが重要である。日々の生活の中で感じることやご家族とともに考える機会を持つことが、本人の意思に沿ったケアに繋げることができると考える。
息子さんの中ではA氏が亡くなられた後も、食べられなかったことに対し、お腹がすいたのではないかと思い、看取りケアがこれで良かったのかと迷いが続いた。その後、看取りに関する新聞記事をを見て本人にとって苦痛だったのではないかと思っていたことが、そうではなかったと思えたと話された。そこでやまゆり苑での看取りケアにおいては、本人の苦痛についての説明が不十分であるという、家族支援での課題が見えてきた。
この事例から、以下の3点が、本人の意思確認ができない方への看取りケアの視点であると考える。①本人の意向を推察するするために家族と他職種チームで話し合う。②ケアの中で本人の思いを汲み取る努力をする。③家族の意思決定を支えるためには説明が重要である。
11:50 意見交換・質疑応答
12:00 閉会
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